〆月√日 （気分は ぼちぼち行こう） ボツ童話？号
「あぶない！」
ドーン！ ポコッ、クルクルクル・・・。
「あいたたた。足、折れたかも。石かと思ったら カメくんじゃないか」
「だ、だいじょうぶかい？ イヌくん」
ぶつかった拍子に ひっくり返って、背中で回りながら カメは ききました。
「うん！へいき。ほら！」
と、イヌは カメのまわりを ピョンピョン走ってみせます。
「あ、そうだった・・・」
思い出したかのように イヌは、カメを助け起こすと、
「急いでたんだ。カメくん、ごめんね、またね〜」
と、突っ走って行きました。
「気をつけてね〜」
☆ ☆ ☆
カメは また、道を渡りはじめます。ザラザラの土を 一歩一歩ふみしめながら。
「やれやれ、やっと 道を横断できたよ」
フワッとした 道ばたの草の上で、カメは ひと休みすることにしました。
「あれぇ〜？ こっちから あっちへ行ってたはずなのに」
道のまん中で クルクル回ったせいで、方向が わからなくなってしまったのでしょう。
「もどらなくちゃね、あっちだ」
と ひとりごとを言いながら、カメは向きを変えようと 首をのばしました。
「ピヨ、ピヨピヨ。カメさん、わたしを背中に 乗せて行って もらえませんか？」
ヒヨコが カメの目の前で、ペコンと頭を下げます。
「いいとも。ひとりで乗れるかい？」
「はい！ ちょっとだけ 飛べるんですよ、わたし」
そう返事をすると、パパパパッと羽をばたつかせました。
「あれぇ〜？ おかしいなぁ・・・飛べるはずなんですけど」
「ぼくのシッポから 上っていいよ」
カメの言葉に甘えて、ヒヨコは 背中のてっぺんまで たどりつけました。
☆ ☆ ☆
「じゃ、道の向こう側へ 出発だ」
「ピヨ、ピヨピヨ。ピヨ、ピヨピヨ・・・」
まん中くらいまで来たとき、背中のヒヨコは、
猛スピードで近づいてくるイヌに気づきます。
「ピヨピヨ、ピヨピヨ。カメさん、急いで！
イヌさんと ぶつかっちゃう・・・ピヨピヨ、ピヨピヨ」
イヌは ピヨピヨ、ピヨピヨという鳴き声を聞き、あわてて止まりました。
「やぁ！ さっきのカメくんじゃないか。ヒヨコちゃんに
ピヨピヨ鳴いてもらうなんて、よく考えついたなぁ」
「おや、さっきのイヌくんでしたか。ぼくが考えたわけではないけれど・・・今度は
ぶつからなくて、ほんとによかった！」
道を渡り終えると、ヒヨコは パパパパッと下りてきて お礼を言いました。
「カメさん、どうもありがとうございます。
わたしは ここから 右の方へ行くので」
「気をつけてね〜」
☆ ☆ ☆
カメは シッポで バイバイをしながら、まっすぐ歩きだします。
そしてヒヨコは・・・右へ曲がり、また右へ、もう一度 右へ。
交差点を ぐるりと一周して、カメの背中に乗った場所へ もどってきたのでした。
毎日、こんな風なのです。
雨のある日は カタツムリと。
「ピヨ、ピヨピヨ。ピヨ、ピヨピヨ・・・」
雨が大好きなカタツムリは、ズブぬれのヒヨコの後ろを 安心して渡って行きました。
「楽しかったよ、ヒヨコちゃん。お家に帰ったら、しっかり羽を
かわかしてもらうんだよ。かぜをひかないようにね」
☆ ☆ ☆
晴れたある日は ケガをしたネコと。
「ピヨ、ピヨピヨ。ピヨ、ピヨピヨ」
いつもなら、追いかけ回されるから ネコが苦手なヒヨコです。
でも、足が痛くて ゆっくりゆっくり歩くネコのそばを離れません。
「おかしなヒヨッコだなぁ。食われたって知らねぇぞ」
と、ネコは めんどくさそうに笑いました。
ネコとヒヨコが渡るとき、止まっていてくれたウシは言いました。
「黄色いヒヨコが見えなかったら、ネコ踏んじゃったかもしれないなぁ」
☆ ☆ ☆
また別の日は ヒヨコだけ。ピヨ、ピヨピヨと鳴くのを忘れて、道を渡っていました。
「カッコウ、カッコウ。ネコが走ってくるよ、ヒヨコちゃん！ カッコウ、カッコウ」
木の上から見ていたカッコウが、透きとおった声で 知らせます。
カッコウの声で、ネコは立ち止まりました。
「な〜んだ、ヒヨッコか。ゆっくり渡りな」
「ピヨ、ピヨピヨ」「カッコウ、カッコウ」
どこにあるのか、どうぶつ村の交差点での お話です。
（おわり）
