∞月⊆日 （気分は 石のようにガンコ） 週刊童話 第５号
「しょうがねぇなぁ・・・ここは ２つのグループに分かれるか？ 」
ケンちゃんが 頭を クシャクシャかきながら言った。
「そうしよう。 ケンちゃんは サキちゃんと行ったほうがいいと思うし、
のんちゃんは 先に下りてたほうがいい 」 ショウタくんが２人を見た。
「じゃ ぼく、のんちゃんと お寺にもどってるよ。 みんな 気をつけてね」
ユウキくんは、 ショウタくんが『知恵の滝』チームに入ったほうがいいと考えて、
すすんで お寺チームに 立候補した。 その気持ちは 男子３人に 通じ合った。
「よし！ じゃ、ショウタ、 行こうぜ 」
「あぁ、わかった！ ユウキくん、 のんちゃんを たのむね 」
「うん！ のんちゃん、 下りようか 」
さっきから ずっと のんちゃんは だまって みんなを見ていた。
どうして みんな いつもみたいに楽しく おしゃべりしないのか、
なぜ サキちゃんは 怒ってて、 なぜ ケンちゃんは 滝へ行くのか・・・、
のんちゃんには 何もわからなかった。 だけど 男の子たちを たのもしく感じていた。
いつも おとなしい ユウキくんでさえ、 お寺チームのリーダーっぽいと思った。
☆ ☆ ☆
「おい待てよ。 急ぐと あぶないぞ！ 」 ケンちゃんは サキちゃんに追いついて
手を引っぱった。 振り返ったサキちゃんは 目に 涙をいっぱいうかべて
「わかってる・・・わかってる・・・けど・・・」 と やっと それだけ言う。
ショウタくんが ハァハァ 息をきらして やって来て
「 『知恵の滝』まで ハァハァ １キロメートルって書いてあったから ハァ
あと １０分くらいかなぁ フゥ〜〜」 と言うと また深呼吸した。
「さ、 行くか！ どんなとこかな？ 楽しみだな？ な？ 」
ケンちゃんは サキちゃんの肩を ポンとたたくと 前を歩いて行く。
「わたしのほうが よっぽど 自分勝手だった・・・」 と、
ケンちゃんの後ろを歩いていた サキちゃんが ポツリと言った。
「しかたないよ、 のんちゃんってば はりきっちゃって、 いつもより何倍も
テンションが上がってたからなぁ〜・・・久しぶりの サキちゃんは イライラしたろう？ 」
ショウタくんの声が そのまた後ろから聞こえた。 サキちゃんには その言葉も
セミの鳴き声も 優しく感じられ、 あっという間の １０分だった。
目の前に 何本かの細い滝が 現れた。 ケンちゃんは 立ち止まって
「 なんか、 地味じゃない？ 」 と 肩をすぼめた。 ショウタくんは もう
『知恵の滝』の説明が書かれている看板を 読みはじめている。
「へぇ〜、 あの滝に 一本ずつ打たれていくと だんだん かしこくなって
心も きれいになって、良い考えが浮かぶんだってさ〜〜。 ケンちゃん、やってみる？ 」
「お、おもしろそうじゃん！ ショウタ、やってみ！ 」 ２人が 笑っていると
「キャァ〜〜！ 」 と サキちゃんの悲鳴が聞こえた。 すがたは見えない・・・。
☆ ☆ ☆
そのころ のんちゃんと ユウキくんは、ゆっくりと 山を下りていた、
登ってきたときより ずっと ゆっくり・・・。 ふたりが通るときだけ セミが
ピタッと鳴きやんで、のんちゃんたちの会話を 待っているかのようだ。
ユウキくんは 何か 話しかけなくちゃと思っていたが 言葉が見つからない。
「わたしって いつも 自分のことしか考えてなくて・・・みんなに いやな思い
させちゃってるよね・・・フゥ〜〜〜、どうしたら 今までどおり 楽しくなる？」
のんちゃんが ため息まじりで ユウキくんに聞いた。
少し前を歩いていたユウキくんは サッとふり向いて まじめな顔で言う。
「そんなことないよ。 その証拠に 今、 のんちゃんは お昼ごはんのことなんて
これっぽっちも 考えてないでしょ？ 頭の中は みんなを楽しませることで
いっぱいで・・・それが のんちゃんさ！ いつも元気で 明るくて・・・」
「くいしんぼうで・・・でしょ？ 」 と のんちゃんは つけたした。
「のんちゃんが きのうの晩、 バタッて倒れたときは おどろいたなんてもんじゃ
なかったよ！ みんな すっごく心配したんだ・・・いつも 元気なだけにね」
ユウキくんが 昨夜のさわぎのことを話すと、 のんちゃんは ポカンとした顔で
「そんなことが？？ なんにも覚えてないや・・・」 と 頭をかいた。
「眠ってたんだから しかたないって言えば しかたないんだけどね。 なのにさ、
のんちゃんったら きょうは 朝から 目いっぱい はりきっちゃってるし
石のフタは すぐあきらめちゃうし・・・で、サキちゃんは イライラしたんだと思うんだ」
ユウキくんが 話し終わったとき、 ふたりは 思わず 顔を見合わせた。
「今、 聞こえた？ 」 「うん！ キャーッて・・・」
「サキちゃんよ！！ なにか あったんだわ！」 「行ってみよう！」
のんちゃんと ユウキくんは 『知恵の滝』への分かれ道まで引き返した。
「こっちだな。 行くよ、 のんちゃん」 「うん！ 急ごう」
☆ ☆ ☆
山の斜面を すべり落ちてしまったサキちゃんを助けようとして、
ケンちゃんと ショウタくんは 注意深く 下りて行った。 と、そのとき
ふみしめた石が コロッと落ちて、 ケンちゃんも ズズっとすべってしまった。
とっさに ショウタくんが ケンちゃんの手をつかんだが 力はもう限界だ。
「サキちゃーん！ どこぉーー？ ケンちゃーん！ ショウタくーん！」
のんちゃんの声が 滝のほうまで ひびきわたった。
「こ、こっちだ！ のんちゃん！」 ケンちゃんは 声をふりしぼる。
「あ、 見つけた！ ユウキくん、 こっち、こっち！ 来るときに ひろった
木のツルを ケンちゃんたちに 投げましょ！」 のんちゃんは テキパキと
ユウキくんに 指示して、 下のみんなにも 声をかけた。
「今 助けるからね〜〜！ もうちょっと がんばっててぇ〜〜」
「せぇーのー」 「ヨイショ！」 「ヨイショ！ ヨイショ！」
のんちゃんと ユウキくんは 力を合わせて 引っぱって、 ケンちゃんと
ショウタくんを じゅんばんに助け上げることに成功した。
「ふぅ〜、 サンキュー！ でも 問題は サキちゃんだ。 足をくじいてしまった
らしくて、 おれたちでは どうしようもないなぁ・・・」 ケンちゃんがため息をついた。
「サキちゃんのお父さんを呼んでくるわ！ 」 のんちゃんは もう走り出していた。
「よし、 じゃ ぼくたちは 滝のほうから サキちゃんを助けておくよ 」
「のんちゃんも 気をつけて行くんだよ 」 ユウキくんと ショウタくんは
そう言って 滝へ走って行く。 ケンちゃんは サキちゃんに 上から叫んだ。
「サキちゃん、 もう 心配ないぞ！ 待ってろ！！」
☆ ☆ ☆
サキちゃんは 助けにかけつけたお父さんに おんぶしてもらって、
無事に お寺に帰ることができた。
「勝手なことしたうえに ケガまでしちゃって・・・迷惑かけて ごめんなさい」
左の足首に シップを貼ってもらって、 痛みも やわらいできたサキちゃんが
ペコリと 頭を下げた。 のんちゃんは とっさに立ち上がって
「あやまるのは わたしのほうよ。 眠ってしまって、 みんなに心配かけて
おまけに ハイテンションで 自分勝手で・・・イライラさせて ごめんなさい」
と言って、 からだを 半分に折り曲げるくらい ペコーっと おじぎした。
「ううん、 わたしがいけないのよ。 のんちゃんは ケガしたわたしのことも
いっしょうけんめい助けてくれたし、 いつだって みんなのこと考えて
くれてるって・・・わかってるつもりだったのに・・・ほんっとに ごめんね！」
「ちがうってば、 サキちゃんは 全然 悪くないよ。 何やっても 根気がなくて
思ったこと すぐに しゃべっちゃって・・・おなか、すぐ減るし・・・ゴメン！」
「いえいえ、 わたしが・・・」 「いやいや、 わたしのほうが・・・」
ペコペコしあっていた サキちゃんと のんちゃんは、近づきすぎて頭がぶつかった。
「痛ってぇ〜〜〜！ ん？ ここは どこ？ わたしは 美人？ 」
「あたたた・・・・も〜！ のんちゃんってば すぐに そうなっちゃう・・・」
レッツ５のみんなは おなかの底から 大笑いした。 ショウタくんが
「もとの仲間にもどれたね。 ホッとしたよ 」 と言うと、 ユウキくんも
「うん！ よかった！！ レッツ５は こうでなくっちゃねっ 」 と笑う。
「あ〜〜、 いっしょうけんめい あやまったら おなかがすい・・・」
のんちゃんが 最後まで言わないうちに ケンちゃんは 食いしん坊の首を
腕で しめあげた。 その様子を見て、 みんなが また ドッと笑った。
☆ ☆ ☆
サキちゃんの足は 軽いねんざだった。 夕方、お寺の近所の病院へ行くと
お医者さんがサキちゃんのレントゲン写真を見て ニコッとほほえんだ。
「ほぉ〜、りっぱな ガッシリした いい骨だね〜。 異常ありませんよ」
その夜 寝る前のレッツ５は サキちゃんの骨の話で もりあがっていた。
「ねぇねぇ、サキちゃん ガッシリなの？ 」 のんちゃんは となりのお布団で
寝転がっていたサキちゃんの腕をつかんで まじまじと見つめた。
「も〜！ 何度も言わさないでよ。 そうよ、りっぱで ガッシリした 高級品よ」
「サキちゃんって のんちゃんより 細いイメージなんだけどな」
ユウキくんが ぼそっと言った。 それを 聞きのがさなかった のんちゃんは
「むむむむっ・・・くらべてみようよ、サキちゃん！」 と 腕をならべてみた。
「やっぱりな〜。 のんちゃんの腕、うっまそう！！ 」 ケンちゃんが
ローストチキンに かぶりつくいきおいで、 のんちゃんの腕をつかんだ。
「や、やめてよぉ！ まだ 焼いてないし・・・」 抵抗する のんちゃんに
「よし、 夏休みが終わるころには こんがり焼けるな！ 」 と ケンちゃんが
お肉・・・じゃなく、腕を あきらめた。 ショウタくんが みんなに話しかける。
「明日は 最後の一日だけど、どうする？ 有効に 楽しみたいよね 」
５人の気持ちは 同じだった・・・やり残したことを 成しとげよう！ と。
☆ ☆ ☆
最後の日、早朝から テキパキと働いた。 座禅では みんな 住職から
ピシッと肩に喝を入れてもらう。 気持ちが引きしまり、 きょう一日が
楽しくなりそうな予感で 満ちあふれた。 ケンちゃんが 深呼吸してから
「さぁ、 はじめるか！」 と 力強く言った。 のんちゃんは すかさず
「まずは お腹がへらないように お昼の おにぎり作りからね！ 」 と
腕まくりした。 もちろん Ｔシャツの袖は 長くないから 格好だけ。
「のんちゃんには 必須アイテムだよね、ごはんが・・・」 ショウタくんが
うなずきながら言う。 サキちゃんも ユウキくんと顔を見合わせて 笑った。
昨日とは まるっきり違うグループのように ワイワイ、にぎやかに
山を登って行くと、 あの 小さなお寺に着いた。 のんちゃんは ポケットから
ゴソゴソ何かを取り出し、 おさい銭箱に投げ入れ 本堂に向かって手を合わせる。
「きょうは おさい銭も 持ってきましたし・・・どーか ひとつ！ あの石の
フタを パカッと 持ち上げるのに 力を貸してくださいな・・・」
静かな境内に のんちゃんの声が響いた。 ケンちゃんが走ってきて
「のんちゃんの おさい銭パワーが 途切れる前に・・・と」 と手を合わせた。
「あっ、あっ！ わたしのおさい銭で！ 何してんのよ、ケンちゃんってば！
ずるい、ずるい。 願い事が 半分しか とどかないかも・・・どーすんの！？」
「いいじゃん、べつに・・・おんなじことを お願いしてるわけだし・・・
気にすんなって！ 」 すると サキちゃんたちも やってきて、
「そうよね、みんなの願いはひとつ！ おさい銭もひとつ！」 と 手を合わせた。
「あーもー、みんなまで・・・信じらんない！」 のんちゃんは あきれ顔だ。
「ところで おさい銭、いくら あげたの？」 ユウキくんが 興味津々で聞いた。
「５円よ！」 のんちゃんが 自慢げに答える。
「えっ？！」 ショウタくんが 驚いたように言い、
「５円玉１個？」 サキちゃんも 確かめるように 聞き返した。
「そうよ！ いいじゃん、『レッツ５』なんだし・・・５で・・・」 という
のんちゃんの返事に、みんな へなへなと 力が抜けていくような感じがした。
☆ ☆ ☆
５人は ゆっくりと あの石のところまで歩いて行った。
「サキちゃん、足は痛くない？ 」 ショウタくんが 気づかった。
「ええ、 ここまで 登ってきたけど 平気。 シップ薬のおかげね 」
サキちゃんは 足を軽くたたいてみせる。 すると すかさず のんちゃんが
「でも サキちゃんの足、 ずいぶん はれている・・・無理しちゃダメよ 」
と 心配そうに、 でも なぜか クスッと笑って言った。
「えぇ、はいはい、どうせ わたしの足は はれてるみたいに 太いですよーだ！ 」
プイッと ほっぺをふくらませたサキちゃんを見て、 男子は 笑いを飲みこんだ。
「よし！ 調子も出てきたところで このフタ、スッと開けちゃおうぜ 」
ケンちゃんのひと言で みんな 引きしまった顔になり、 それぞれ 石のフタの
角に付いている 丸い取っ手をにぎりしめた。 ユウキくんは 大きく深呼吸した。
「フハァ〜〜〜、せぇ〜の〜 よいしょっ！！」 いっせいに 力をこめて持ち上げる。
「あっ！ ちょっと動いた！！ 」 「だな！ もう１回いくぞ・・・せぇ〜の〜」
「うぉいしょっと！！」 ５センチくらい フタがずれた。 のんちゃんがジャンプする。
「やったぁ！！ 」 「おい、まだだぞ。 手、ぬくな・・・もう１回！ 」
喜びを身体で表したのんちゃんだったが すぐに ケンちゃんに 怒られた。
「みんな、 開けたいって気持ちを この箱に伝えるんだ！ ぼくは 開けたい！！ 」
ショウタくんが いつになく ハイテンションで 叫んだ。 つづいて のんちゃんも
「わたしも 開けたい！！ 」 と。 「ぼくも開けたい！ 」 「わたしも開けたい！」
「おれも 開けたい！！！ 」 「せぇ〜の〜 開けっ！ 」 ５人の力が 大きな石の
フタに伝わった。 一瞬フワッと軽くなり、 半分ほど ずれたところで止まった。
「やったぁ〜！！ 」 のんちゃんは ショウタくん、 ユウキくんと ハイタッチした。
サキちゃんは ケンちゃんに 飛びつく。 歓声におどろいたのか 山は静まりかえった。
☆ ☆ ☆
「中には 何が入ってるんだろう？ 」 のんちゃんが 興味しんしんで のぞこうとする。
「のんちゃん、 気をつけて！ 」 サキちゃんが ちょっと離れたところから言った。
「ま、まさか ミイラが眠ってるってことはないよねぇ 」 ユウキくんはビビッている。
ショウタくんと ケンちゃんが のんちゃんのすぐ後ろから いっしょに のぞいた。
「あれぇ〜？ 何にも入ってない・・・」 のんちゃんはガクッと 肩を落とす。
「たしかに・・・空っぽだ 」 ショウタくんが のぞきこんで確かめた。
「でも・・・何か におわないか？ このにおいは・・・」 ケンちゃんは 箱の中に
頭を突っ込んだまま言ったので、 洞くつの中でしゃべったみたいに 声が響いた。
ゆっくり近づいたサキちゃんは 何回か のぞいて、 自信ありげに言う。
「潮の香り・・・海の匂いだわ、これ！！ 」 それを聞いて、 ユウキくんは
勇気をだして中を見た。 コケが生えている。 だけど、山のにおいや 草の香りはしない。
「不思議だねぇ〜。 山なのに 海なんだ、この中は 」 と 首をかしげる。
「中に入ってみて いい？ 」 またまた のんちゃんは みんなを驚かせる。
「やめとけ！ 急に フタが閉まっちゃうかもしれないぞ 」 ケンちゃんが むぼうな
のんちゃんの腕をつかまえて ロックオンした。 ショウタくんが みんなに
「中は確かめられたし、 フタをきちんと 元にもどして、ご住職に 聞きに行こうよ 」
と、 提案する。 のんちゃん以外の３人は うなづいて、 フタの取っ手を持った。
「もう 閉めちゃうの〜？ 残念だなぁ・・・中に入ったら 海にワープできるかも
しれないっつうのに・・・あの わからず屋ったら もー・・・ブツブツブツ 」
のんちゃんは 小声で なにやら つぶやいている。 しっかり聞いていたケンちゃんは
「おい！ そこの あきらめの悪いヤツ、こっち来て わからず屋を手伝え！ 」
と 笑った。 閉めるときは それほど 苦労せずに済んだ。 山を下りながら
みんなは あの謎の石の箱について、 あーでもない こーでもないと話し合った。
「すべては ご住職のみぞ知る 」 ショウタくんが 真面目な顔で しめくくると
『レッツ５』は 大笑い。 と、そのとき のんちゃんが 大声で「あーー！」と叫んだ。
「のんちゃん、 どうしたの？ 」 サキちゃんが あわてて 聞く。
「おにぎり、食べ忘れた！！ 」 みんな 転びそうになった。
☆ ☆ ☆
「やりましたよ〜！ わたしたち、 あの 石の箱、 開けられました！！」
のんちゃんが だれよりも早く ふもとの お寺に下りてきました。
境内で サキちゃんのお父さんたちと 話をしていた住職は、笑いながら５人を迎えた。
「ほぅ、 がんばったのぉ〜。 で、 どうじゃったかの？ 何が 入っておった？」
「何がって・・・なんと言えばいいのか・・・」 ショウタくんが 口ごもった。
「空っぽだったんですけど・・・だけど、 潮の香りがしたんです 」
サキちゃんが言うと、住職は みんなを 本堂に上がる 階段に座らせて
「あの 大きな石の箱を開けるのは とても 困難なことじゃ。 それを成しとげた
者だけに与えられるのは・・・」 と、 そこまで言って 一息ついた。
「ごほうび、 何にも入ってなかったんですけど！ ちょっと 期待はずれ・・・」
がまんできずに のんちゃんが 口をはさむ。 サキちゃんは シーッと 人差し指で
合図し、 ケンちゃんは のんちゃんの わき腹を ひじで こづいた。
住職は そんな様子を ほほえましく思いながら 話を続ける。
「ほうびは、 将来の予言じゃ。 ５人で 力を合わせた結果が 潮の香り・・・
海の匂いということは、 みんなの友情を 海がささえてくれるのかのぉ。
どのようなかたちかは わからんが、 ５人と海は 大切なつながりを持つんじゃ。
まさに 前途洋洋、 楽しみですなっ！ わっはっはっ！！ 」
『レッツ５』は 顔を見合わせた。 明らかに のんちゃんは がっかりしていた。
「わたし、 食べ物がよかったのに・・・予言って・・・お腹いっぱいにならないし」
「でもさぁ、 ぼくたち 将来もずっと 仲良く やっていけるってことだろ？ 」
ユウキくんが ホッとしたように言った。 それを聞いて ショウタくんも喜ぶ。
「そうだね。 しかも 今の ぼくたちには 想像できない 海つながりだって！」
☆ ☆ ☆
２泊３日の『レッツ５ 修行の旅』は 終わろうとしている。 住職に お礼を言った。
「いろいろな経験と たくさんの思い出を 大切にします 」 と ショウタくん。
「お世話になりました。 とっても 楽しかったです 」 と ユウキくん。
「ケンカしちゃったり ケガしちゃったり ご心配かけて、 すみませんでした 」
サキちゃんは ペコッと 頭を下げた。 つづいて ケンちゃんが まじめな顔で
「人生に行き詰ったら、また お邪魔します！ 」 と 言う。 そして最後に・・・
「ご住職、ごちそうさまでした！！！ 」 のんちゃんは予想どおりのあいさつだった。
（おしまい）
