ケンちゃん、ユウキくん、ショウタくん、サキちゃんです。
あ、そうそう・・・５年生が終わって サキちゃんは 転校してしまいましたが・・・
５人のグル−プ名は 『レッツ５（ご）』 と いいます。
それでは今から レッツ５の体験した たのしい世界に ご案内しますね。
∀月◆日 （気分は きびしい修行じゃ） 週刊童話 第５号
のんちゃんには いつも仲良く遊んでいる ４人の仲間がいます。
ケンちゃん、ユウキくん、ショウタくん、サキちゃんです。
あ、そうそう・・・５年生が終わって サキちゃんは 転校してしまいましたが・・・
５人のグル−プ名は 『レッツ５（ご）』 と いいます。
それでは今から レッツ５の体験した たのしい世界に ご案内しますね。
「昨日、サキちゃんから 手紙が来たよ！」 朝から元気な のんちゃんが
ケンちゃん、ユウキくん、ショウタくんに 言った。
６年生の一学期も 半分ほど終わって、 そろそろ梅雨に入ろうとしていた。
「ぼくのところにも 届いてたよ。 男子の友達も できたんだってさ」
ショウタくんは チラチラッと ケンちゃんのほうを見ながら言った。
「なんだよ、ショウタ。 おれには 関係ないよ、そんなの・・・」
ケンちゃんは そっけないそぶりで 石ころを け飛ばした。
「そういえば 夏休みに 『レッツ５』 の みんなに 会いに行きたいって
書いてあったような・・・」 ユウキくんは カバンから サキちゃんの手紙を
出しながら言った。 のんちゃんは その手紙をのぞきこみながら
「それって ヤバくない？ だって わたしたちが サキちゃんのところへ
遊びに行く予定でしょ。 はぁ〜、 ないしょにしてるのって つらいねぇ」 と
ため息をついた。 みんなは どうしたらいいか 考えた。
あ〜でもない、こ〜でもないと 考えているうちに 学校についてしまった。
☆ ☆ ☆
昼休み、校庭のてつぼうのところに ４人は集まっていた。
「夏休みは じゅくの夏期講習で いそがしいってことにする？」
ショウタくんが 提案した。 みんな うなづいた。
「だけどさぁ〜、あきらめて お出かけしちゃったら どうする？」
てつぼうで クルッと逆上がりして のんちゃんが言った。
「サキちゃんの おばちゃんには ちゃんと日程を伝えておかなきゃマズイよ」
高いてつぼうに ぶら下がっていた ユウキくんが そう言いながら 飛び降りた。
「よし！ 決まりだな。 のんちゃん、手紙出しとけよ」
「なによ〜、えらそうに ケンちゃんったら・・・自分が出せば！ わたし、
うまく うそがつけないと思うし。 ケンちゃんなら うそ、得意じゃん」
「おれが いつ、うそついたってんだよ！ このぉ〜」 ケンちゃんは
のんちゃんを てつぼうから 引っぱり下ろして おしりをたたこうとした。
「キャ〜〜！ サキちゃ〜ん！ ケンちゃんが いじめるよ〜〜！」
のんちゃんは そんなことを叫びながら 教室のほうへ 逃げていった。
「しょうがない・・・ぼく、夏期講習があるのは うそじゃないから
手紙、出しておくよ。 ケンちゃん、おばちゃんに 電話しといてよ」
ショウタくんが 言った。 ケンちゃんは 胸をポンッとたたいて
「そっちは まかせとけ！」 と 笑った。 ちょうど チャイムが鳴って
３人も 教室へ 走ってもどった。 梅雨が終われば もうすぐ 夏だ。
☆ ☆ ☆
「サキちゃん、がっかりしてるみたいだよ。 みんなに会いたかったのに・・・って」
手紙を書く役目だったショウタくんが サキちゃんからの返事を見ながら言った。
「びっくりするだろうなぁ〜、とつぜん会いに行ったら！ 」
のんちゃんは ワクワクする気持ちを おさえきれないみたいだ。
梅雨も明け、 ピカピカだった太陽が ギラギラしはじめた空の下、
みんなは ひさしぶりに 公園に集まっていた。 計画実行まで あと一週間だ。
「まったく・・・のんちゃんは きらくなもんだな・・・」
ケンちゃんが ボソッとつぶやいた。 ほっぺを ふくらませた のんちゃんは
「なによぉ〜、 わたしが 何にも準備を手伝ってないって 言いたいの？
わたしはねぇ、行ってから！サキちゃんに会ってから がんばるんだから！！」 と
ケンちゃんに つめ寄った。 あとずさりしながら ケンちゃんは言う。
「わかった！わかったよ・・・ドジらないように がんばれ！」
その答えを 聞き終わらないうちに のんちゃんは ケンちゃんのほうへダッシュ！
ふたりは いつものように 追いかけっこをはじめた。
「ケンちゃんってば ひと言 多いんだよな！ 」 ユウキくんが 笑う。
「そうそう、 正直すぎるんだよ・・・」 ショウタくんも 笑う。
「泊まるところは お寺だったっけ？ 」 ユウキくんが聞くと、
「あぁ、 座禅で 修行させなくちゃ、 あのふたり！！」 と ショウタくんは
汗びっしょりで かけまわっている ケンちゃんと のんちゃんを見ながら言った。
☆ ☆ ☆
夏休みに入ったばかりの ある日、 サキちゃんは 図書館にいた。
自由研究に必要な本をさがしている。 宿題を てきぱきと終わらせてしまえば
レッツ５のみんなの町へ遊びに行けるかもしれない・・・そんなことを考えながら。
外では セミたちが 夏休みを喜んでいるみたいに ミーンミーン鳴いている。
サキちゃんは フフフーンフーンフーンと鼻歌まじりで かけ出してきた。
帽子が むし暑い風にあおられて 飛ばされそうになり、 あわてて押さえる。 と、
「えっ？！ 」 後ろの方で なにか サワッと 人のかげが動いたような気がした。
ふりむいてみたけれど だれも、なにも いない。 サキちゃんは 歩きはじめた。
今度は ぜったいに 足音が聞こえる。 セミの声よりも大きな音が タッタッタッと
ついてくる。 サキちゃんは ふりむかなくちゃ・・・と思った。 思ったけれど
こわくて ふりむけなかった。 鼻歌どころじゃない！ 猛ダッシュで・・・、
サキちゃんにとっての 猛ダッシュで、 走った。 次のかどを曲がれば 家が見える。
そう思ったとき、 歩道の小さな段差でつまずいて ころびそうになった。
すっと だれかに 肩をつかまれた。 というか、 ささえてくれたのかな・・・？
「キャー！ たすけてぇーー！」
サキちゃんは 生まれてきてから いちばん大きな声で さけんだ。
「おい、 おれだよ」
その声を聞いたとたん、 サキちゃんは へなへなとしゃがみこんだ。
☆ ☆ ☆
「あいかわらず 足、おっそいなぁ〜」 追いかけてきた足音の主（ぬし）が笑った。
「ケンちゃんの バカァ！！！ こわかったんだからね。 こわかったんだから・・・」
ホッとしたサキちゃんの目から なみだがあふれ出す。 と、サキちゃんの家のほうから
のんちゃんと ショウタくんと ユウキくんが かけてきた。
「だいじょうぶ？ サキちゃん！ 」 「ケガしなかった？ 」
「ケンちゃんが なにかしたの？ 」 ３人は つづけざまに 質問した。
「み、みんな〜〜〜！ えっ？！ なに、なに、これ ドッキリ？ 」
サキちゃんは 答えにならない返事をすると、 完全に すわりこんでしまった。
「うっそぉ〜！ 夢みたい・・・」 そう言いながら、 ４人の顔を かわりばんこに
見回しているサキちゃんのほっぺを のんちゃんが おもいっきり つねった。
「痛ぁ〜〜い！ なんで つねるの？！」 ほほを押さえて サキちゃんが怒ると
「ね、 夢じゃないでしょ〜？！ 」 と のんちゃんは にげだした。
「も〜！ のんちゃんったら 久しぶりに会ったともだちに、 いきなり これかい！ 」
サキちゃんも 負けじと 追っかける。 走るのは おそいけど・・・。
「なんだか、 サキちゃん パワーアップしてない？ 」
かけっこしている２人を ユウキくんは ちょっぴりビビリながら 見ていた。
「たしかに・・・。 サキちゃんは もっと おしとやかだったよな、 ケンちゃん？」
ショウタくんは にこにこ笑って ケンちゃんを見る。
「そうかなぁ〜。 そんなにかわってないと思うけど・・・。
みんなに会えたから、 きゅうに 元気がでたんじゃないのか？ 」
冷静に話すケンちゃんは いつになく おとなっぽかった。
☆ ☆ ☆
「それでね、 ケンちゃんってば 待ちきれなくて 図書館まで むかえに行ったのよ・・・」
サキちゃんと のんちゃんは もう ３０分くらい しゃべりっぱなしだ。
ユウキくんも ショウタくんも いっしょに話したいけれど、 口をはさむスキがない。
ケンちゃんは 笑いながら、 話を聞いているだけだった。
しゃべりすぎて のどがかわいた のんちゃんが、 麦茶をのんでいる間に
やっと ショウタくんが 言えた！
「サキちゃん、 今から お寺で修行なんだ。 そろそろ、 したくしてね 」
「みんなで お寺に泊まるの？ わぁ〜〜、おもしろそう！
のんちゃんも ケンちゃんも きたえてもらわなくちゃ・・・ねっ！ 」
「のんちゃんには 修行が必要だけど おれは じゅうぶん できあがってる・・・」
「できあがってるって？？ どこらへんが〜？ ここか？ こっちか？」
のんちゃんは ケンちゃんの あたまや おしりをつっついた。
「やっぱり レッツ５は ５人だな！ 」 ユウキくんは ショウタくんに言った。
☆ ☆ ☆
お寺の境内のまん中あたりに 大きな木が１本あって、 ５人を 歓迎してくれた。
「うわぁ〜〜、でっかい木！ サキちゃん、手をひろげて 測ってみようよ 」
のんちゃんは サキちゃんと手をつないで 木に抱きついた。
「まだ足りない・・・ケンちゃんも 手、かして！ 」 「あ？ おぉ・・・」
ケンちゃんは のんちゃんに手を引っぱられて、 木にしがみついた。
右手が サキちゃんの指先にふれて 一瞬、 手を引っ込めたが
「サキちゃん、どう？ 」 という のんちゃんの声を聞いて、 ケンちゃんも
思い切って サキちゃんの手をにぎった。
「のんちゃん、 ちょうどよ！ ３人分ね、 この木・・・おっきい・・・」
のんちゃんと ケンちゃんと 手をつないだまま、 サキちゃんは 木を見上げた。
青々としげった葉っぱのすき間から 夕方の白い空が光っている。
「さ、 ご住職のところへ あいさつに行くよ 」 サキちゃんのお父さんが言った。
「はぁ〜〜い！ 」 「いよいよだな 」 「楽しみ〜 」 わいわいガヤガヤ、
『レッツ５』は サキちゃんのお父さんとお母さんの後ろを ついて行った。
☆ ☆ ☆
「肉がありません！ 」 のんちゃんは 夕食のおぜんを見て 住職に言った。
「のんちゃんったら・・・」 サキちゃんは ちょっと 顔を赤くした。
「精進料理なんだよ 」 ショウタくんが 小声で言うと、 住職も 笑いながら
「まぁ、 温かいうちに 召し上がれ。 お話は 食事の片づけが終わってからじゃ 」
と言って、 のんちゃんの頭を ポンポンっとたたいた。
「お肉がないなんて、 おかあさんのダイエット料理みたいね・・・」
のんちゃんは ボソッとつぶやいてから お吸い物をひと口・・・
「ふぁ〜、 きのこの味。 山の味。 おいしい〜〜 」 感激だった。
緊張しているせいか、 みんな 静かに 味わって食べている。 そう、 のんちゃん以外は！
「プリンみたいな これは 何だろう？ おぉ！！ すんごい弾力・・・」
何もかもが めずらしくて おいしかった。 お肉なしのお料理を 残さず食べた。
「ごちそうさまでした！！ 」 片づけが終わると みんなは
お話を聞くために 輪になって タタミに座る。 住職のせきばらいが 部屋に響いた。
「オホン！ きょうは ようこそ おいでくださった。 さっそくじゃが、
さきほどの夕げは いかがじゃったかな？ お寺では 精進料理というてなぁ・・・」
住職のお話は つづいていたが、 おなかいっぱいの のんちゃんには
まるで 子守り歌のように 心地よくて・・・。
☆ ☆ ☆
「・・・と いうことじゃな。 それでは 明日の朝は 早いでの、
そろそろ みんな 部屋へもどって・・・」 住職が そこまで話し終えたとき
ドタッ！と音がして のんちゃんが あおむけに ひっくりかえった。
「キャー！！ のんちゃん、だいじょうぶ？！」 サキちゃんは 飛んで行って
だき起こした。 まだ ぐったりしている。 みんなが心配しているなか、
住職だけは にこにこしながら サキちゃんのお父さんに 言った。
「よっぽど疲れておるんじゃろう。 話のあいだ中、 こっくりこっくり
フネをこいでおったからのう。 部屋で 寝かせてやってくだされ」
「のんちゃんったら 信じらんない・・・お父さんに だっこされても
まだ寝てるし・・・」 ふとんをしきながら サキちゃんは ぶつぶつ言っている。
「おどろいたね〜。 てっきり 病気だと思った！」 ユウキくんは ちょっと
青ざめていた。 ケンちゃんは あきれ顔。 ショウタくんは 疲れきって
「いつものことだけど、 きょうは ほんとに ビックリだ 」 と、
ため息まじりに言った。 そして のんちゃんは、というと・・・
「だめだ、 もう食べられないよぉぉ 」 夢の中で まだ精進料理を食べていた。
☆ ☆ ☆
「おはよ〜〜！ ５時よ、 みんな 起きろ〜〜！」 のんちゃんは 元気いっぱい
みんなを 起こして回る。 ケンちゃんのタオルケットを引っぱって
「ほ〜ら、 いつまで寝てんの？ 起きなさい！ 修行よ、修行！」 と大声で言った。
「なんだよ〜〜、 のんちゃんは たっぷり眠っただろうけどさ〜 」
ケンちゃんが 頭をかきながら 起き上がった。 ほかの３人も くちぐちに言う。
「ひとりで ハリキッちゃってぇ・・・」 「なんか・・・あんまり眠れなかった」
「のんちゃんのせいで こっちは クタクタなのよ！ いいかげんにして！」
サキちゃんの言葉は いちばんキツかった。 のんちゃんには、みんなが なぜ
プンプンしているのか わからない。 境内では とっくに目を覚ましているセミたちが
ミーンミーンミーンと にぎやかに鳴いている。 なのに 部屋の中では
『レッツ５』が だまって もくもくと みじたくをととのえていた。
☆ ☆ ☆
お寺の朝の空気は 酸素が濃いかもしれない。 胸いっぱいに 深呼吸すると、
それだけで お腹の中まで 満ち足りたような気分になる。
境内の はき掃除当番になった のんちゃんと サキちゃんは
「あ〜〜、空気も おいしい！ きょうも がんばれるねっ！ サキちゃん」
「のんちゃん、 手が動いてないわよ！ 遊んでないで サッサと 庭をはきましょ」
といった感じで ピリピリ・ムードだ。 本堂の縁側をふき掃除していた 男子チームは
「なんか 嵐の予感がする・・・」 「楽しく修行したいけどなぁ・・・」
「うん、 せっかく 会いに来たんだしな・・・」 と、 心配そうに言った。
お経を唱え、 朝食をすませると いよいよ 座禅の修行だ。
「昨日にくらべて ずいぶんと静かになったのぉ〜。 さて、 その調子で
心静かに あぐらを組んで 目を閉じてもらおう。 肩の力を抜いての」
のんちゃんたちは おとうさん座りして、目をつぶった。
セミは 早朝よりも いっそう元気に鳴いている。 お線香の いい匂いがする。
サキちゃんは 昨夜からの イライラ気分が抜けなかった。
『私が怒るのは まちがってなんかないわ！ だって・・・のんちゃんってば
自由すぎるんだもん・・・みんなで楽しくやろうって、思わないのかしら、まったく・・・』
そう考えていたら 肩に力が入ってしまって、 グラッと動いた。
住職が サキちゃんの右肩に 長い棒のようなものを そっとのせた。
ハッとして 頭を左にかたむけると ピシッ！ピシッ！と たたかれる。
左肩にも ピシッピシッと入れてもらうと サキちゃんは 手を合わせて おじぎした。
☆ ☆ ☆
「さてと、 みんな 心は おだやかになったかの？ 今から ５人を 良い所へ
連れて行ってあげよう。 少々 山の上のほうじゃがな・・・したくをしておいで」
お寺のうらへまわると 山へ登る道があった。 １０分くらい登ったころ、
小さなお寺に着いた。 住職は ゆっくりと 境内のすみにある 大きな石でできた
箱みたいなものの所へ歩いて行く。 レッツ５のみんなも 小走りで かけよった。
五角形の石は ゴツゴツのフタのようで ５つの角には 鉄の取っ手がついている。
「５人で このフタを開けられるかの？ 」 住職は ほほえんで言った。
「おし！ やってみようぜ！ 」 ケンちゃんが みんなに呼びかけて 取っ手を持つ。
「せぇーのぉー」 「ヨイショ！！」 フタは びくともしなかった。
「重〜〜〜いもん！ むりむり・・・」 のんちゃんは 早速 ギブアップ。
「また、のんちゃんの わがままが はじまった・・・４人で やってみましょ！」
サキちゃんは ムッとして言う。 ケンちゃんが 取っ手を ２人分持った。
「せぇ〜〜の〜〜〜」 「ヨイショッ！」 ４人のかけ声は ハァ〜〜〜っという
ため息に変わった。 体中から 汗がふき出してきたような感じだ。
「なかなか むずかしいじゃろう？ ５人の気持ちが ひとつになったとき・・・
そのときじゃ・・・」 それだけ言うと 住職は さっさと 山を下りて行った。
☆ ☆ ☆
「そのときじゃ・・って・・・？」 「気になるね」 「開けたいな」
男の子たちは やる気まんまんで 石のフタをなでている。
「５人の気持ちを ひとつにするなんてこと 今のわたしたちに できるの？」
サキちゃんが のんちゃんのほうを チラチラ見ながら言った。
「できないさ、 このままじゃね。 下のお寺にもどって 考えよう！」
ショウタくんは いつも冷静だ。 バラバラになってしまった みんなの
気持ちを 何とか もとどおりにしたいと思っていた。 それなのに・・・
のんちゃんときたら この小さいお寺の 小さい本堂に手を合わせ、
「神様ぁ〜〜！ いますか？ あの 石のフタ、開けたいんですけど
たすけてください 」 と 大きな声をはりあげて お願いしている。
「あのなぁ、 そんな 大胆なお願い事しないの！！ 」
ケンちゃんが あきれた顔で のんちゃんに向かって 叫んだ。
「はりきってたぼくたちって なんかバカみたい？ 」 と、ユウキくんは苦笑い。
「のんちゃん、 お寺にもどるよ」 「オッケー！ おなかすいたもんね」
その返事を聞いて、 男子チームは カクッと 力が抜けてしまった。
☆ ☆ ☆
５人は 山道を下っていく。 いつもなら ああだ、こうだと 楽しく
話し合いながら歩く道・・・こんなに静かに歩いたこと、 あっただろうか。
半分くらいもどってきたところで サキちゃんが 立ち止まって
「ねぇ、 わき道があるわ！ 」 と、 左のほうを 指さした。
「ほんとだ！ のぼってくるときは 上のほうばかり見てたから 気づかなかったな」
ケンちゃんも 足を止めた。 ユウキくんは みちしるべを見て、
「こっちは『知恵の滝』へ行く道らしいよ。 どうする？」 と みんなに聞いた。
「わたし、 おなかがすいたから お寺に帰りたい 」 のんちゃんは言う。
「そうだな、 行くなら 昼めし食べてからにしようぜ」 ケンちゃんが 賛成した。
すると、 サキちゃんが すごいけんまくで しゃべりはじめた。
「なによ、 また のんちゃんの味方？ おなかがすいてるなら ひとりで
帰ればいいじゃん！ お昼まで まだ時間もあるんだし、 行ってみましょうよ。
いい知恵が浮かぶかもしれないわ！ いつも いつも のんちゃんに振り回されて
イライラする。 わたしのことだって・・・わたしの言ってることだって、
少しは 聞いてよ！！」 言い終わると さっさと 左の道へと進んでいった。
山の風は すずしかった。 カッとなったサキちゃんのほっぺも、
おなかペコペコの のんちゃんのほっぺも、 同じようにそっと 風は なでていった。
（下につづく）
