＃月♭日 （気分は ずっとなかよし） ボツ童話？号
ムギュッ、ガフガフ・・・。
わぁ、たぁくんが ふうせんをにぎってるよ。
さっき くすりやのおばちゃんがくれた きいろいクマくんのかたちの。
お耳をニギニギされて クマくんが ないてるみたい。
ブリリリリ、ブルッブルッ・・・。
あぁ、こんどは ふうせんをなでている。
クマくんを ヨシヨシしてるのかな。
クマくんは うれしそうなんだけどね、
ぼくは その音、せなかがモゾモゾして きもちわるいんだよ。
「あーん、うわぁーん・・・」
あーぁ、ふうせんに かみつこうとするから、おかあさんに とりあげられちゃった。
ぼくのおとうと、たぁくんは まだ、ちっちゃいの。
大きなこえで なくのが、おしごとなんだって。
コトッコトッ、コトコト・・・。
たぁくんは ベビーカーでこのみちをとおってるとき、たいてい ねむっちゃうんだ。
レンガいろの石が しきつめてあって、ぼくは大すき。
雨ふりのあとだって 水たまりができないんだよ。
カン、カン、カン、カン・・・。
ふみきりがちかづくと パッチリ 目をあける。
ほら、おきた。
いまから たぁくんの おきにいりのでん車が とおっていくよ。
ゴォーー、カタッ、カタン、カタッ、カタン・・・。
まえがみが、でん車のかぜで ふきとばされそうなのに
たぁくんはごきげん。うでをいーっぱいにひろげて 足をバタバタさせている。
コロコロ、ポッコン、コロコロ、ポコン。
ふみきりをわたるとき、ベビーカーは 小さく はねあがる。
とってもおもしろいってこと、ぼくもしってるよ。
ベビーカーをおすおてつだいより、よっぽどね。
サワサワ、カサコソ、カサカサカサ・・。
たぁくん、かぜがふいて きもちいいね。
だれかがすてた おかしのふくろが、ころがっていく。
ベビーカーにむすびつけた クマくんのふうせんは 空へ いきたそうだ。
「まんまんまんま、まんま・・・ぶぅー」
たぁくんは おかあさんのことも ごはんのことも まんまっていう。
ぼくと おとうさんは、つぎに どっちのことをよんでくれるか、ドキドキなんだ。
チャポン・・・。
川で なにかが はねたみたい。 カッパかな。 こいのぼりかな。
たぁくん、なんだとおもう？ わかった、まんまでしょ。
ぼくは、このまえ おとしてしまったビーだまだとおもうんだ。
キュー、カチッ。
おかあさんが ベビーカーのストッパーをおした。
となりのとなりのおばちゃんと ちょっとながいおはなしをするんだな。
たぁくん、まんまは もうすこし ガマンね。
ピーピリピー、ピチピチピー・・・。
空のたかいところで 小とりがないてる。
あのとりも なくのがおしごとなんだな、きっと。
たぁくんも 空をみあげていた。そして・・・、
「クシュン！」
「ハクシュン！」
あははは、ふたりいっしょに くしゃみがでちゃった。
かぜひきさんじゃないのに なぜだろう。
小とりといっしょに ぼくたちもわらった。
パッチン、パッチン、パチン。
おばちゃんが おにわのあかい花をきってくれた。
おかあさんは その花をたべた。
とおもったら、たべたんじゃなくて においをかいだのか。
おれいをいって、やっと おうちにかえった。
たぁくんとおなじくらい、ぼくも おなかがペコペコだよ。
チュルチュル、チュルン・・・。
うどんのはしっこが ピョンとはねて、つゆがとんだ。
たぁくんの はなにとんだ。
それでも かまわず、モリモリたべる。
おいしいね、たぁくん。
ブリリリリ、ブルッブルッ・・・。
わぁ、また たぁくんが ふうせんをなでて あそんでる。
ぼくは まだ、おしょくじ中だよ。
きもちわるい音、やめてくれないかなぁ。
パァーン！
「あぁぁーん・・・」
クマのふうせんがわれちゃった。
たぁくんが スキスキッて とびのったら、われちゃった。
かぜひきさんじゃないのに はな水たらして、いっしょうけんめい ないてる。
「はい、チーン」
ぼくは たぁくんのはな水を ティシューでふいてあげた。
おかあさんは あかい花を テーブルにかざっている。
チリン・・・。チリリン・・・。
すずしいかぜが ふうりんをならした。
おひるねしようか、たぁくん。
「いーたん・・・いーたん」
たぁくんの ねごと。 ききたかったなぁ。
（おわり）
