〒月＄日 （気分は 星空 のち 真っ暗） ボツ童話？号
夜空を見上げると たくさんの星たちが チカッ、チカチカッと またたいています。
でも、町のあかりが 明るすぎると 見えないかもしれませんね。
あ、今 星が流れたのに・・・願いごとをするの、忘れてしまいました。
そんな夜空の お話です。
☆ ☆ ☆
「いやだよ、ぼく 流れたくない・・・」 ちっちゃな星が だだをこねています。
「お願いごとを 考えながら、待っている人たちがいるのよ。 さ、行きましょう」
おかあさん星は 流れ星になる前に、ひときわ明るく かがやきながら言いました。
ちっちゃな星は 知っていました。 アパートのベランダから
目をこらして 空を見上げている女の子の願いごとを。
『お星さま、わたしは 水泳がにがてだから 明日、雨にしてください！』
ちっちゃな星は 知っていました。 庭のしばふに 寝ころがって、
流れ星を待っている男の子の願いごとも。
『明日 晴れてくれぇ！！ だって プールの日なんだもん』
「雨が降ってほしい子と 晴れてほしい子。 両方のお願いを
かなえてあげることは、できないよ。 おひさまだって、雨雲さんだって
きっと こまってしまうさ」 ちっちゃな星は ひとりごとを言ったあと、
とおりかかった白い雲に 聞いてみました。
「白い雲さん、こんばんは。明日、雨雲さんは どのあたりで お仕事ですか？」
「やぁ、流れ星くん こんばんは！ 雨雲たちは みんな、南の海の方へ行ったよ。
力を合わせて 台風になるんだってさ」
「じゃ 明日、ここらへんは 晴れなの？」
「おぅ！ おれたち白い雲も 見当たらないほどの すばらしい晴れさ」
白い雲は 笑いながら 飛んで行きました。
「ぼくのこと、『流れ星くん』だって・・・。 『流れない星』なんだぞ！」
ちっちゃな星は 不満そうにつぶやきました。 それは 女の子の願いごとを
かなえてあげられない 自分への不満でもありました。
「なにをブツブツ言ってるの？ さぁ 流れるわよ！」
おかあさん星は 長い光のしっぽをなびかせて、ヒュ〜ッと 消えて行きました。
「ぼ、ぼくは 流れない星なんだぁ！！」 大声で さけんでみましたが、
なにかに ひっぱられるように 落ちてしまいました。
☆ ☆ ☆
数日後、ちっちゃな星は なぜだか また、夜空にいました。
女の子の願いごとを かなえてあげられなかったことが とても 気になっています。
『お星さま、明日 台風が来ませんように。 わたしね、がんばって
泳げるようになったの。 水泳を 好きになれるかも』
「あの日、晴れてよかったんだ・・・女の子のためにも。 それで、こんどは
台風を追っぱらえって？ 勝手だなぁ〜、まったく」
ちっちゃな星は ひとりごとを言ったあと、とおりかかった 雨雲に聞きました。
「雨雲さん、こんばんは。明日 台風さんは どのあたりで お仕事ですか？」
「おや、流れ星くん こんばんは！ 台風は おひさまのパワーが強すぎて、
こっちへ近づけないんだ。 西の方へ にげて行っちゃうよ」
「じゃ、明日 ここらへんは 晴れなの？」
「う〜む、晴れはしないが おれたち雨雲は 来ないよ」
雨雲は ポツリポツリと 雨を降らせながら、西へ行ってしまいました。
「ぼくのこと、『流れ星くん』だって・・・。 きょうこそ、
『流れない星』になるんだ！」 女の子の願いごとは おひさまが
かなえてくれるとわかって、ちっちゃな星は 少し ガッカリです。
「ぼくは 流れ星じゃないぞ〜！！」 どんなにさけんでも、
ちっちゃな星をひっぱる 大きな力には かないません。
パッと 明るく光って ス〜ッと 夜空にとけてしまいました。
☆ ☆ ☆
また何日かたって ちっちゃな星は 夜空にいました。
女の子の願いごとが こんどは 何なのか、気になります。
『また、流れ星くんに 会えますように』
「え〜っ！？ ぼくに会いたいって？ こればっかりは ぼくの出番か・・・」
ちっちゃな星は ひとりごとを言ったあと、とおりかかった流れ星に 聞きました。
「流れ星さん、こんばんは。きょうは 何の お仕事ですか？」
「あぁ、流れ星くん こんばんは！ ぼくたち流れ星は 流れることが仕事なんだ。
夜空に スーッとひとすじの線を引く。 それだけで ほんの少しのしあわせを
届けられるんだ。 どこかの だれかのところへ・・・」
流れ星は うれしそうに流れていきました。
「ぼくのこと、『流れ星くん』だって・・・。 でも いいんだ。
きょうは あの子の願いごとを かなえるために 会いに行くんだから。
ぼくは『流れ星くん』なんだ！！」 ちっちゃな星は ポッと 赤く光ったかと
思うと、あの子のいるベランダのほうへ 静かに流れていきました。
「また、ぼくに会いたいって だれかがお願いしてくれますように〜〜！！」
と、願いながら・・・。
（おわり）
