％月∞日 （気分は キョロキョロ） ボツ童話？号
「ダァ〜〜、やだやだ、あっちに行けぇ〜」 ぼくは 近づいてくるドラゴンを
キックで やっつけようと、思いっきりけとばした。
「いってぇ〜！ なにすんだよ！」 ドラゴンが おとうさんみたいな声でどなった。
と思ったら、目がさめた。
「ぼく また、おとうさんを けとばした？ ごめんなさい・・・」
「あ、あははは。 だんだん キックが強くなってきたなぁ。 きょうは 何とたたかったんだ？」
「すっごく大きなドラゴンが来たの。 だから ジャンプして けとばしてやったんだ！」
「で、やっつけたのか？」
「ううん、また おとうさんの声で・・・」
「そっか、そりゃ わるいことしたな。 こんどは キックやパンチじゃないやりかたで
やっつけてみな！」 こんな朝は 元気よく ようちえんに行けるんだ。
☆ ☆ ☆
「うわぁ〜、おいしそう！ でも こんなに食べられるかなぁ」
ぼくは 目の前にならんでる たくさんのケーキを ムシャムシャ食べた。
「また、なにか食べてるゆめを見てるのね。 朝よ。 おきなさい！」
ケーキが にげてく・・・まだ 食べてるのに。 と思ったら、目がさめた。
「ぼくのケーキ・・・あ、おかあさん おはよう」
「きょうは ケーキを食べてたのね。 さ、朝ごはんよ。 ゆめじゃなく、ほんもののね」
こんな朝は しあわせな気分で ようちえんに行けるんだ。
☆ ☆ ☆
夜中に 目がさめた。
いつもなら、右を見ると おとうさんが ねている。 ちょっぴり いびきがうるさい。
だけど おとうさんのほうを向いてねたら、かいじゅうをやっつけるゆめを 見られるんだ。
いつもなら、左を見れば おかあさんが そばにねていてくれる。
ぼくのむねに 手をおいたままだから 少しくるしい。
だけど おかあさんのほうを向いてねたら、おいしいたべもののゆめを 見られるんだ。
今、ぼくは ひとりぼっちで ねている。
右を見て 左を見て ぼくは思った、ゆめを見ないで 朝になるのかなと・・・。
☆ ☆ ☆
元気がでないし、しあわせな気分でもない朝、おとうさんは いなかった。
「おかあさん、おとうさんはおしごとなの？」
「そうよ。これから ずっと いそがしいんだって」
「え〜っ！ ずっと？ それじゃ、かいじゅうのゆめは？」
「かいじゅうって・・・いつも おとうさんを けとばしてるゆめのことかな？」
「べ、べつに ぼくは おとうさんを けとばしてるんじゃないけど」
おかあさんは わらっていた。 なんだかさみしそうだった。
☆ ☆ ☆
それから まいにち、ぼくは 左を向いて ねた。
ゆめの中で おなかいっぱい おいしいものを食べた。食べすぎて、
おなかが いまにも ばくはつしそうだ。 バァ〜〜ン！
「うわぁ〜〜ん、ばくはつしたぁ」 ぼくは はじめて、こわいゆめを見て ないた。
おかあさんが ギュッてだきしめてくれたから、ゆめだとわかった。
「どうしたの？」
「ぼくのおなかが ばくはつしちゃった・・」
「ふぅ〜ん、じゃ お水をのんでみようか？」
「どうして？」
「おなかに あながあいてたら、もれちゃうでしょ？ すぐに わかるわ！」
よくわからないけど ぼくは お水を少しのんだ。
ゆめの中で食べた おいしいものより ずっと おいしかった。
☆ ☆ ☆
ぼくが こわいゆめを見て ないた つぎの日の夜、
右には おとうさんがいた。 左には おかあさんもいた。
おとうさんの手と おかあさんの手は ぼくの むねの上で あくしゅをしてるみたい。
「おとうさん、キックやパンチをつかわずに かいじゅうをやっつけるには
どうしたらいいの？」
「そうだなぁ。 おいしいケーキを食べさせて なかよくなっちゃう！ってのは どうだ？」
「うん！ いいさくせんかも！」 そう言ったあとで ぼくは かんがえた。
きょうは どっちを向いてねればいいんだろう？ ゆめの中に かいじゅうも ケーキも
出てくれなくちゃこまるんだけど・・・。
（おわり）
