∞月剴 （気分は ぼちぼち のち いい感じ〜♪） ボツ童話？号
「いらっしゃい！ なにになさいますか？」
「ぜんざい！」
「まいど！ ぜんざい、いっちょう！」
ここは おしるこやさんです。 おみせのおくのちょうりばのほうから、
あずきをゆでている、いいにおいがしてきます。 ちょうりばのかってぐちを
あけると ちいさないけがあって、ゼンザイというなまえのゼニガメが
すんでいます。 ゼンザイには とてもきになることがありました。
じぶんのなまえとおなじ 『ぜんざい』 とは どんなたべものか、ということです。
あるひ、ゼンザイは いけをぬけだし、かってぐちまで もそもそあるいていきました。
「どうやって なかへはいろう」
ゼンザイが かんがえていると ちょうど てんいんさんが、ごみをすてにいくところで、
うまいぐあいに ちょうりばへはいることができました。
ゼンザイは、『ぜんざい』 をたべる いいほうほうも おもいつかないまま
もっそもっそと あるいていました。 みぎてをまえにだそうとしたとき、
たまたま とおりかかった ごしゅじんのズボンのすそに そのてが
ひっかかってしまいました。
「ラッキー！ このまま ごしゅじんのあしをのぼっていけば……」
ゼンザイは ひとりごとをいいながら、もっそもっそと のぼりはじめました。
「いつか 『ぜんざい』 にたどりつくかな？」
ごしゅじんは はたらきもので、うごきっぱなしです。 ふりおとされないように
ゼンザイは しがみつきます。 ごしゅじんに くっついているとはいえ、
ゼンザイは こんなにはやいスピードで うごいたことがありません。
「いやぁ〜、ぼくは きょう、いちねんぶんくらい うごいたかもしれないなぁ〜」
ゼンザイは、みみのそばをとおりすぎる かぜのおとをききました。
ヒューン、ヒュンヒュン、ヒューンと、おんがくのようにきこえるので
たのしくなって、しっかりと しがみつくことを わすれてしまいました。
すると、つぎのしゅんかん……ビュ〜ン！ と、ゼンザイは とばされてしまったのです。
やっとのおもいで ごしゅじんのうでまで たどりついていたのに……。
「うわぁ〜〜、たすけてぇ〜〜」
ボッチャン！ おちたのは 『ぜんざい』 の おわんのなかでした。
「は〜い、ぜんざい おまたせしました」
なにもしらずに てんいんさんが、ゼンザイのはいった 『ぜんざい』 を
おきゃくさんのところへ はこんでいきます。
「キャ〜〜！ なに？ これ！ カメ？」
おきゃくさんのひめいをきいて、ごしゅじんは あわててとんでいきました。
「もうしわけございません。すぐにとりかえますので……」
ていねいにあやまってから、おわんをのぞきこんだ ごしゅじんは
「どうして、ゼンザイが このなかにいるんだ？ あとで おしおきだからな！」
と、おわんごと かってぐちのそとに おいていきました。
「やった！」
『ぜんざい』 のなかから かおをだしたゼンザイは 『ぜんざい』 にかこまれて
とてもしあわせでした。
（おわり）
