▼月△日 （気分は わくわく！） 週刊童話 第１号
あれから ３日後。きょうは１学期の終業式です。
「明日から 夏休みかぁ〜」 のんちゃんは 空に向かってガッツ・ポ−ズしました。
「けっきょく、あの こびとたちは なんだったんだろうね」
ユウキくんが ボソッと言ったので、サキちゃんも 首をかしげながら
「夢だったんじゃないの？」 と ひとごとのように こたえました。
「おい！ みんなで おんなじ夢を見たってのか？」
ケンちゃんは なっとくがいきません。
「お昼から 夏祭りの準備の お手伝いで 集会所にいくでしょ？」
のんちゃんの言葉を聞いて、ショウタくんは ひらめきました。
「そのときに コピ−機を 調べてみようよ！」
「な〜るほど」 「ＯＫ！」 「じゃっ！ １時に 集会所でな！！」
レッツ５のみんなは これから起こるできごとに
ワクワクしながら 家へいそぎました。
☆ ☆ ☆
集会所には 町内会の会長さんや、子供会のおかあさんたち、
子供たちが、たくさん集まってきました。
「は〜い、みんな集合！ 仕事の分担をするよ」 子供会の役員のおかあさんが
テキパキと みんなの希望を聞きながら、仕事を決めていきます。
「のんちゃんと、ケンちゃん、ユウキくん、ショウタくん、サキちゃんは、
夏祭りのお知らせのチラシを 作って！ コピ−は ２００枚ね」
「ハ−イ！」 ５人は、元気よく返事をしました。
「うわっ！ 今までで いちばん いい返事だね〜」
そりゃ、そうです。コピ−機の調査には またとない仕事なのですから・・・。
さっそく、ケンちゃんが コピ−機の上のふたを開けてみると、
裏返しの写真が ありました。のんちゃんが 手にとって、
「あっ！ これは この前の ソフトボ−ル大会の記念写真だわ！」
と、大きな声で いいました。
その声を聞いて、町内会の会長さんが やってきました。
「あ〜、それは 大会の結果をお知らせするプリントを作っていて、
取り出すのを 忘れてたんだ」
「田村のおじさん、それは いつ頃のことですか？」
ショウタくんが 会長さんに 聞きました。
「３週間前の ソフトボ−ル大会の 次の日だよ」
「へんな音が うわさになりはじめた頃と 一致するね。と、いうことは・・・」
ユウキくんは ４人を 見渡しながら言いました。
「田村のおじさん、ありがとうございます。ぼくたち、夜中に集会所を
使いたいんですけど・・・どうしたら いいですか？」
ケンちゃんが いつになく ていねいに、会長さんに たずねると、
「なにか わけがありそうだね。よし、おじさんが 立ち会っていいなら
利用を 許可しよう。前もって 連絡してくれれば いつでもＯＫだよ」
と、答えてくれました。
「やったぁ〜！！」 ５人は とびあがりました。
「さっ、チラシを仕上げようよ。計画は そのあとよ！」 サキちゃんにうながされて
みんな それぞれの役割に とりかかりました。
☆ ☆ ☆
夏祭りのチラシ作りが終わって、レッツ５は 公園で 話し合いました。
「コピ−しようとした写真から、小人が生まれるのね！」 と
のんちゃんが はしゃいで言いました。
「のんちゃん、声 デカイよ。落ち着けって！」 ケンちゃんに注意されて
のんちゃんは あわてて 口を両手で おさえました。
「小人の出現時刻は、およそ 午後１１時半から１２時半までだけだよね」
ショウタくんは はめてもいないのに腕時計を見るしぐさをして 言いました。
「人の写った写真だけしか、ダメなのかなぁ〜」 サキちゃんには 考えがあるようです。
「どういうこと？」 ユウキくんが聞くと、
「食べ物や 乗り物、風景なんかは どうなのかなぁ〜って 思ったの」
「なるほど！ それは 試してみないとね」
「みんな、それぞれ これは！っていう写真をもって、明日の夜 集まろうよ」
「さんせ〜い！！ 今から 田村のおじさんに たのんで来よう」
集会所で 夏祭りの準備中の 田村のおじさんに レッツ５は お願いに行きました。
「明日の夜かぁ〜。そりゃ、また 急な話だね。よし！ わかった。
夜の１１時に おじさんは ここに来るからね」
「よろしく お願いします！！」 「やったぁ〜！！」 「よかったね〜」
５人は それぞれに お礼を言って、歓声をあげました。
集会所からの 帰り道、ユウキくんが 言いました。
「ぼく、ポラロイド・カメラを 持って行くよ。
そしたら その場で 撮ることもできるだろ？！」
「いいねぇ〜、グッド・アイディア！」 ケンちゃんが ユウキくんの背中を
ポ−ンとたたいて かけだしました。
「じゃぁ、明日な！！」
☆ ☆ ☆
夏休み１日目の 夜１１時です。
集会所のコピ−機の前に レッツ５と、町内会の会長 田村のおじさんが
集まりました。おじさんには 集会所へ行く途中、今までのことを話しておきました。
「どんな写真を 持ってきた？」 のんちゃんが みんなに 聞きました。
ケンちゃんは かっこいいスポ−ツカ−の、サキちゃんは ペットのうさぎの、
ユウキくんは 富士山の、そして ショウタくんは おじいちゃんの・・・。
「のんちやんは 何の写真を 持って来たの？」 サキちゃんに言われて
のんちゃんは うれしそうに みんなに見せました。
「わたしの１歳の お誕生日に おかあさんが作ってくれたケ−キ！」
「やっぱりなぁ〜。のんちゃんは 食いしんぼうだから しょうがないか・・・」
ケンちゃんが あきれて つぶやきました。
「ぼくね、おじいちゃんに 言い忘れたことがあるの」
ショウタくんが ボソッと言って、写真を見つめています。
「そういえば ショウタくんの おじいちゃん、去年亡くなったんだったね」
ユウキくんも 優しかったショウタくんの おじいちゃんのことを思い出しました。
「毎月、本を買ってもらってたんだ。それで ぼくは 本を読むのが
大好きになったんだよ。おじいちゃん、ありがとう・・・って 言いたい」
「よし！さっそく 実験に とりかかろう！！」
田村のおじさんが 時計を見ながら 言いました。もう １１時２０分です。
レッツ５は、急いでコピ−機に ５枚の写真をならべて、動きだすのを待ちました。
☆ ☆ ☆
１１時３０分、キュ〜、ギギギギィ〜、ピ〜という音が 静かな集会所に
ひびいたのと同時に ピカ〜ッ！と 光がはしりました。
「あっ！ 何か 出てきた！！」 と、ケンちゃん。
「ケ−キかしら！？」 「そんな バカなぁ〜」 「あっ！ ミミだ！！」
そう、コピ−機の中から 真っ先に 飛び出してきたのは
サキちゃんのペット、うさぎのミミちゃんでした。
「スポ−ツカ−は？」
「富士山は やっぱり 無理だったかなぁ〜？」
「ミミだけしか 出てこないのかしら？」
みんな 自分の写真の結果が 気になります。いちばん期待しているのは
ショウタくんかもしれません。あきらめかけて コピ−機を のぞいたとき・・・
おじいちゃんが ゆったりとした動作で 登場しました。
「おじいちゃん！ おじいちゃんだぁ！！」 ショウタくんは おじいちゃんを
てのひらに乗せて、なみだぐんでしまいました。
「ショウタ！ 言いたいこと、いっとかないと 消えちゃうぞ」
ケンちゃんの言葉で、時間が短いことを思い出したショウタくんは
ちっちゃいおじいちゃんに向かって 言いました。
「おじいちゃん、いつも 本を買ってくれて ありがとう。
ぼく、読書が 大好きになったよ！ おじいちゃんの おかげだよ・・・」
こらえきれずに なみだが流れ落ちました。小人の おじいちゃんは
頭に落ちてきた 大つぶのなみだをぬぐいながら、にこにこしています。
「小人のおじいちゃんは しゃべることが できないんだね。
でも きっと 気持ちは 伝わってるよ」
田村のおじさんに かたを抱いてもらって、ショウタくんは うなづきました。
☆ ☆ ☆
「動物しか、ダメだってことかぁ〜」 ガッカリして のんちゃんが言いました。
「ねぇ、ポラロイド・カメラ、ためしてみる？」
ユウキくんの 提案に みんな賛成です。
「おじさんが みんなを 撮ってあげよう」
「わくわくしてきた・・・」 「わたしの小人、きっと かわいいわ！」
５人は、カメラに Ｖサインしながら、思い思いに おしゃべりしていました。
☆ ☆ ☆
「じゃぁ、撮るよ！ １・２・３・・・」
「ダァ〜〜！！」 レッツ５は 右手をあげて 叫びました。
「ユウキくん、どう？ かわいく撮れてる？」
サキちゃんは 写り具合が 気になるようです。
少しずつ みんなの顔が はっきりしてきました。
「サキちゃん、目をつむっちゃったのね」
と のんちゃんが 笑いながら言いました。
「いいもん！ 小人ちゃんは かわいいはずだから！」
できあがった写真を さっそくコピ−してみました。
キュ〜、ギギギギィ〜、ピ〜。光とともに コピ−機が働きはじめました。
「あっ！ ぼくだ！！」 ケンちゃんが 一番に 飛び出してきました。
つづいて、のんちゃんと サキちゃんが 手をつないで 降りてきます。
「やっぱり かわいいわぁ〜」 サキちゃんは さっきから そればっかり！
「よし！ ミニのんちゃんを つかまえちゃぉ！」 と のんちゃんは
小人の のんちゃんを 追いかけはじめました。
ショウタくんと ユウキくんは 落ち着いて 出てきました。
「小人だけど 性格まで コピ−されてるみたいだね」
ショウタくんは 満足そうです。ユウキくんは コピ−機から降りようと
している２人を 手伝ってあげています、
「重さを 感じないね〜」 と つぶやきながら・・・。
「ねぇ？ もうひとつ ポラロイド・カメラで試したいことがあるんだけど・・・」
ショウタくんが ユウキくんに お願いするような目をして 言いました。
「なぁに？」 「写真が できあがる前に コピ−したら、どうなるんだろう？」
「田村のおじさん！ もう１度 撮ってください！！」
みんな 興味津々で おじさんにたのみました。
「よし！ １・２・３！！」 「ダァァァ〜！！」
すぐに 写真を コピ−機に はさみました。
まだ、のんちゃんたちのすがたが あらわれていないうちに・・・。
キュ〜、ギギギギィ〜、ピ〜。光が 走ると同時に・・・
「きゃ〜〜〜！」 ５人は 悲鳴とともに
コピ−機に 吸い込まれてしまいました。
あわてたのは 自治会長の 田村さんです。
「ど、どうなったんだ！？ おい！！ みんな どこだ！？」
「おじさん！ ぼくたち 小人になっちゃった！」
今度の小人は レッツ５の 完全ミニチュアです。
自分の意思で しゃべったり 動いたりできるようです。
「楽し〜い！」 「ちゃんと １２時半には もとに戻るかなぁ〜？」
５人は びっくりするやら、感激するやら、不安になるやらで
時間が経つのを 待ちました。
☆ ☆ ☆
「昨日は どきどきしたね〜」
のんちゃんは、まだ 夢を見ているような気分でした。
「ほんと！ もとどおりにならなかったら どうしようかと思ったわ」
サキちゃんも 興奮しているようです。
「すっごいことを 体験しちゃったね！」
「うん！ 一生 忘れないと思うわ・・・」
「でも だぁ〜れも 信じてくれないって！」
「それも そうね！」 ふたりは 大きな声で笑いました。
「あっ！ そこの掲示板に ポスタ−、貼らなくっちゃ！」 と
サキちゃんが 思い出したように言いました。
２人は 夏祭りのポスタ−を 町内の掲示板へ貼ってくる係りです。
「ケンちゃんたちは 何の係りだっけ？」
のんちゃんが 落とした押しピンを 拾いながら聞きました。
「たしか、金魚すくいの看板を描いてると思うわ、３人で・・・」
「おもしろそう〜。早いとこ この仕事を終わらせちゃって、
手伝いに行こう！」 のんちゃんたちは つぎの掲示板へ 急ぎました。
☆ ☆ ☆
夏祭りまで あと２週間あまり・・・という ある日、
いつものように レッツ５は 集会所で、金魚すくいの看板を
あ〜でもない、こ〜でもないと 意見を出し合いながら
楽しく 描いていました。
「どうした？ のんちゃん！ きょうは 元気がないなぁ〜」
ショウタくんが のんちゃんの様子に 気づきました。
「そういえば、いつものパワ−がないわね」
「ここ、ちょっと 暑いからね〜。外の空気、吸ってくる？」
ユウキくんも心配そうです。
「お腹が いたいのか？」 口の悪いケンちゃんまでが
気にかけてくれたので、今まで いっしょうけんめいガマンしていた
のんちゃんの目から 涙がこぼれ落ちました。
「どうしたんだよ？」 「おうちで 何かあったの？」
「話してみろよ！」 「ちからに なるよ」
いったん、涙があふれてくると もう のんちゃんが
どんなに がんばっても 止められませんでした。
☆ ☆ ☆
「おとうさんと・・・おかあさんがね・・・」
やっと 聞き取れるくらいの かぼそい声で、のんちゃんは 話はじめました。
「昨日、一言も 会話してないの。ケンカしてるの。
おかあさんが わたしに聞いたんだ・・・『おとうさんと、おかあさん、
別々に暮らすけど のんちゃんは どっちと一緒がいい？』って・・・」
そこまで言うと また、肩をふるわせて、うつむきました。
「え〜っ！？ のんちゃんちの パパとママって すっごくなかよしじゃん」
サキちゃんは のんちゃんの家族と一緒に キャンプをしたことも
あるので、よく知っていました。
「ケンカの原因、なんなんだろ？ のんちゃん、知ってるの？」
ショウタくんが 聞くと、のんちゃんは 涙をぬぐいながら答えました。
「ボトルシップ・・・」
「ボトルシップ？！」みんなは声をそろえて 聞き返しました。
「ボトルシップって 筋肉痛のとき 貼る薬か？」
ケンちゃんは のんちゃんを笑わせるつもりで言ったのに、ユウキくんに
「それは シップ薬！ ボトルシップって ビンの中に
帆船なんかが入っている置物だよ。」 と、切り替えされてしまいました。
「それで？ ボトルシップを どうしたの？」
サキちゃんは 話のさきが 気になるようです。
「おかあさんが おとうさんの大切にしている ボトルシップを
お掃除のときに 落としてしまって・・・」
「壊れちゃったのか・・・」 みんな 大事なものが壊れてしまったときのことを
思い出したようです。のんちゃんの おとうさんが怒る気持ちも わかるのです。
「ぼくたちで 直せるといいんだけど・・・」
「無理だよ、そんなの」 「そうねぇ、とっても 細かい作業なのよ」
「どこかで おんなじものを見つけて、買ってくるとか・・・」
「高いと思うよ。それに 自分で作ったから、大事なんだ！」
レッツ５は あれこれと 話し合いました。
その間も のんちゃんは 黙ったままです。
『みんなが なんとかしようと、考えてくれている・・・
わたしも 泣いてないで しっかりしなくちゃ！』
心の中で つぶやきました。
「そうか！！」 突然、ショウタくんが 叫びました。
「ビックリさせるなよ、どうしたんだ？！」 と ケンちゃんが 聞くと
「ぼくたちで 直せないこともないよ」
５人は 頭がくっつきそうなほど 小さな円陣をくみました。
☆ ☆ ☆
ショウタくんの アイデアを さっそく 実行に移すことにしました。
まず、のんちゃんが 壊れたボトルシップを 持ち出します。
それから ５人は、町内会の会長の 田村のおじさんに 相談に行きました。
「おぉ、見事に 壊れてるなぁ〜。 ん？ このお酒の 空きビンなら
ちょうど おじさんちに あるぞ。持っていくと いい！」
「よかったな、のんちゃん！」 ケンちゃんは 自分のことのように
喜んでくれました。のんちゃんも しだいに 笑顔が出てきます。
「それで、おじさんに お願いがあるんですけど・・・」
ショウタくんが 考えをまとめて、おじさんに話しました。
「なるほど！ そういうことなら、喜んで協力するよ。実行は 今夜からだね」
☆ ☆ ☆
その日の夜、レッツ５と 田村のおじさんは、集会所に集まりました。
「役割を分担しよう！」 ショウタくんが そう言うと、
みんなは それぞれ 自分にできることを 考えはじめました。
「ぼくは やっぱり、力仕事だな！」 ケンちゃんが 一番最初に立候補です。
「わたしも・・・」 のんちゃんも 手をあげました。
「ぼくは プラモデルを作るの 好きだから、外から 指示するよ」
ユウキくんが 積極的に 言いました。
「わたしも 中に入るわ！」 サキちゃんは ワクワクしているようです。
「ぼくも 中だ・・・。おじさんは 外から 材料を手渡してください」
最後に ショウタくんが しめくくると、おじさんも
「よしきた！ まかせてくれ！！」 分担が決まったところで
ユウキくんと おじさん以外は ポラロイド写真に おさまりました。
☆ ☆ ☆
毎日１時間という限られた時を 無駄にしないよう、
５人は いっしょうけんめい働きました。
「やったぁ〜！！ 完成だぁ〜〜！」
それは 夏祭りの前日、じつに ２０日間もかかって できあがったのです。
「みんな！ ありがとう・・・わたしのために・・・
いっぱい力を分けてくれて・・・わたし、きっと・・・大人になっても
このことは 忘れないと思う！！」
町内の夏祭りの日、のんちゃん親子の 楽しそうな姿が
会場にあったっていうことは・・・ここに書く必要も ないですね。
（おしまい）
