○月△日 （気分は曇天） ボツ童話？号
ピンポ−ン。
「あやちゃん、あそぼ」
「あ、なっちゃん。もうすぐ宿題おわるから 庭で待ってて」
あやちゃんの家の庭には、白いイスとテ−ブルが 置いてあります。
そこに腰掛けながら ふと見ると、足元の芝生の上に、わりばしが
１本落ちていました。ありんこが 行列を作って、はしの橋を渡っています。
☆ ☆ ☆
（甘いんだな、あの わりばし。そっか、綿菓子だ。
あやちゃん、花火大会に行ったんだわ。おかあさんと 手をつないで
しゅんちゃんを かたぐるました おとうさんのズボンもつかまえて
河原の夜店を見て歩いてたら、甘い匂いがしてきて・・・。
あやちゃんは、綿菓子を欲しがらないの。でも、しゅんちゃんに 聞くのよ。
『しゅんちゃん、綿菓子欲しいでしょ。おねえちゃんが買ってきてあげようか』
そのとき、ピィ〜〜〜、ドッパ−ンって 花火が上がって、
しゅんちゃんがびっくりして、おとうさんの肩から落ちそうになって、
泣き出したの。いくら なだめても、泣きやめる様子はないのよね。
それで、おかあさんが 綿菓子を買ってくれたってわけ）
なっちゃんの想像は どんどんふくらんで、
今にも ドッカ〜ンと、はれつしそうです。
☆ ☆ ☆
（帰り道、綿菓子にかみつきながら歩いていると、おとうさんが言ったの。
『あや、見てごらん。空にも 川があるんだよ』
『知ってる〜。天の川でしょ。どこ？どこにあるの？』
おとうさんが指さす方向を見ると、キラキラ光る星が、
流れているようでした。
『おとうさん、地上にも 雲があるんだよ』
『え−っ、どこに？』
あやちゃんは、自分が食べていた綿菓子を見せて、
『ほら！』
家に帰ってきても 天の川を見ていたくて、庭で 雲をかじってたから
ここに わりばしが あるのよ！）
☆ ☆ ☆
「なっちゃん、お待たせ。何して遊ぶ？」
「ねぇ、あやちゃん。きのう 花火大会に行って、綿菓子 食べたでしょ？」
「ううん、行ってないよ」
「だって、この わりばし・・・」
「あぁ、それは 家にある綿菓子機で作ったの」
ドッカ〜ン、パパパパ、パ〜ン！
なっちゃんの頭の中の想像が、花火になって はじけました。
（おしまい）
